— なぜ壊れなかったのか回路図から読み解く —
今回は、micro:bit の電源(3.3V)とGNDをショートさせてしまったという、プログラミング教室で実際に起きた出来事を紹介します。
結論から言うと、micro:bit は壊れませんでした。
しかし「なぜ壊れなかったのか?」を回路図とデータシートから調べてみると、
micro:bit の設計の良さがよく分かりました。
事件発生:micro:bit が動かない!
プログラミング教室で、フォトレジスターを使った制御プログラムを作っていた生徒さんが、
「できたんですけど、micro:bit が動かないんです…」
と言うので回路を見せてもらいました。
触った瞬間に 本体がほんのり温かい。
「あ、これ短絡(ショート)してるやつだ…」とすぐに分かりました。
原因:ブレッドボードの電源ラインでショート

micro:bit は本体の下にピンが並んでいますが、直接ブレッドボードに挿すことはできません。
そのため 拡張ボード を使い、そこからブレッドボードへ配線します。
ブレッドボードの両端には電源ラインがありますが、 生徒さんは プラスの電源ラインに「3.3V」と「GND」を両方挿してしまった とのこと。
つまり、ブレッドボードを介して 完全にショート していたわけです。
micro:bit の回路図を確認してみた

「絶対壊れたと思ったのに、直したら普通に動いた…なぜ?」
気になったので、micro:bit の回路図を確認しました。
今回の電源供給は USB(VBUS 5V) から行っていました。
■ 電源ラインの流れ(簡略)

- VBUS(5V)
- → VCOMBINED
- → 電源IC(NCB114)
- → 3.3V(VREG)
- → micro:bit のマイコンへ供給
ショートしたのは 電源IC(NCB114)が3.3Vを出力した直後のライン です。
普通なら電源ICが壊れてもおかしくありません。
電源IC(NCP114)が優秀すぎた

データシートを確認すると、この電源ICには
- サーマルシャットダウン(過熱保護)
- カレントリミット(過電流保護)
が搭載されていました。
■ どう動作したのか?
- ショートにより 300mA(最大) が流れる
- IC が発熱
- 一定温度を超えると 出力を強制的に0Vに落とす(シャットダウン)
データシートの波形にも、 「3.3V → 0V に急落する」 というサーマルシャットダウンの挙動が示されています。
つまり、
電源ICが自分を守りながら、micro:bit 本体も守ってくれた
というわけです。
とはいえ完全に安心はできない
ただし、気になる点もあります。
- サーマルシャットダウンが働くまで 20msほど300mAが流れ続ける
- その間、ショートしたラインを通って電流が流れる
- micro:bit のマイコンやピンに影響が出ている可能性はゼロではない
今回は動作しましたが、 ピンの一部が弱っている可能性 もあり、長期的には注意が必要です。
まとめ:micro:bit は初心者に優しい設計だった
今回の件で分かったことは、
- micro:bit は電源ICが優秀で、ショートしても壊れにくい
- 初心者向けに「壊れにくい設計」がされている
- とはいえ、電源ラインの扱いは慎重にすべき
初めての電子工作には micro:bit が向いている理由が、改めてよく分かりました。
おわりに
生徒さんにとっては良い学びになったと思いますし、 私自身も micro:bit の設計の強さを再確認できました。
電子工作では 電源ラインの扱いが最重要 です。 今回のようなショートは誰でもやってしまう可能性があるので、ぜひ気をつけてください。
以上で今回の内容は終わります。ありがとうございました。
付録
・microbit 回路図
・microbit ハードウェア概要
・NCP114 datasheet
https://np.component-world.com/datasheets/6f/NCP114ASN150T1G.pdf
